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触覚の不思議

こんにちは。

少しずつ秋の気配が近づいて暑さが和らいできましたが、

夏の疲れも出る頃ですので注意してお過ごし下さいね。

さて今回は、身近で感じる皮膚の不思議や、

皮膚を温めることの大切さ、

7-NaNa-鍼灸院川西院での施術が役立つことなどを

お伝えしていきたいと思います。

(1)かゆみはなぜ起きる?

 かゆみは、「引っ掻きたくなるような不快な感覚」と定義されますが、実は、かゆみは体を守る防衛反応の1つなのです。
皮膚に異物がついた際に、かゆみを感じることによって、異常が起きている場所を私たちに知らせ、その異物を掻いて取り除こうとする行動を起こすのです。
 
 かゆみは、痛みとよく比較され、両者とも神経を伝わって感じることから、かつては「痛みの神経が感じる弱い痛みがかゆみである」と考えられていました。確かに両者は似ている点があり、皮膚の痛点に弱い電気刺激を与えると、かゆみが感じられます。
このように、かゆみを弱い痛みの感覚として考えることは一見正しいように感じますが、近年の研究では、かゆみは「掻く」行動を生じるのに対し、痛みは「回避」の行動を生じることや、強いかゆみは痛みにならないことなどから、痛みとかゆみは異なる感覚だと考えた方が正しいとされてきています。

また、伝達経路にも少し違いがみられます。
痛みとかゆみの経路は同じ脊髄視床路であり、脳のかゆみを感じる部位も、痛みを感じる部位もほとんど同じですが、かゆみの場合は視床での反応がみられないことが分かっています。
それらのわずかな違いが、両者の感覚の違いを生み出しているのです。

<掻けば掻くほど…>

 なぜ、掻くとかゆみが和らぐのでしょうか。
掻くことはかゆいという不快な感覚に拮抗する刺激を与えることです。
掻くことは、痛みを与えることであり、人の体はかゆみか痛みかのどちらか強い方の感覚だけを感じるようになるために、かゆみが感じられなくなるとされています。

 しかし、掻くとかゆみが和らぐ場合だけでなく、逆に掻けば掻くほど余計にかゆくなってしまうこともあります。
通常は、掻くことで痛み刺激を与えるためにかゆみが和らぐのですが、アトピー性皮膚炎患者のように、慢性的にかゆみに悩まされている場合、掻くことは痛み刺激にはならず、それどころか、掻くことでさらにヒスタミンが分泌されてかゆみを強くしてしまいます。
さらに、掻いて表皮を傷つけてしまうと、表皮のバリア機能が失われて、わずかな刺激にも敏感になり、微生物などが入りやすくなってしまいます。
すると、表皮からサイトカイン(炎症反応を引き起こす物質)などが分泌されるようになり、さらに皮膚の炎症が悪化し、かゆみが増すのです。

 また、アトピー性皮膚炎の場合は、脳レベルでの変化までも起こっていることがあります。
例えば、普通なら痛みと感じるような刺激や熱も、脳がかゆみとして判断してしまうのです。そのため、アトピー性皮膚炎患者は、日常経験するさまざまな刺激によって、あらゆる部位でかゆみが現れてしまうのです。

<ストレスとかゆみの程度>

 ストレスと感じる程度は、「刺激が脅威と感じるか否か」「その脅威に対処できると思うか否か」という2段階の判断によって決まります。

ある出来事が自分にとって脅威であり、それに対処できないと感じた瞬間から、体に反応が現れるといわれています。
つまり、ストレスによるかゆみは一種の心身症なのです。

 アトピー性皮膚炎患者の場合も、人間関係や容貌に対する不満や不安が、自分にとってそれが脅威であり対処できないと感じるからこそ、それがストレスとなり、かゆみを強めているのでしょう。

また、アトピー性皮膚炎患者に限らず、嫌いな勉強や人間関係の不和など、嫌なことやイライラすることがあるときに、かゆみに襲われた経験を持つ人は少なくないでしょう。
一生懸命勉強したり、考えごとをしたりしているとき、頭がかゆくなったことはないでしょうか。ある調査では、看護学生は、国家試験前日にはその1ヵ月前と比べて、血中のヒスタミンの濃度が上昇していることが分かりました。

さらに、ストレスに対する対処能力の低い人ほど、かゆみも強いという報告もあります。

このように、ストレスはかゆみを悪化させる大きな原因になります。

<かゆみと快感>

 かゆみ自体は不快な感覚ですが、そのかゆいところを掻くことには、むしろ快感が伴います。

例えば、蚊に刺されて腫れ上がったかゆい皮膚を、爪痕がつくほど押さえつけると、何とも言えない快感を得ることができます。

 かゆい皮膚を掻くと快感を得るのはなぜでしょうか。

強いかゆみがある場合、皮膚は特殊な興奮状態にあるため、そこに痛みの刺激が加わると、相互作用によって痛みによる快感が生まれるのです。そのメカニズムはまだ解明されていませんが、人はこの快感を求めて、かゆい皮膚を掻きむしってしまうのでしょう。

ところが、かゆいところを長時間掻き続けていれば、かゆみも治まりますが快感もなくなり、やがて痛みに変わっていきます。

かゆみの治療には、よく使い捨てカイロが使われることがあります。

使い捨てカイロをかゆい部位に当てると、熱さのせいでかゆみが治まってきます。
同じように、かゆいところを氷で冷やしても効果があります。

熱さは温かさに痛みが加わった感覚です。
過度の冷たさも、冷感に痛みが加わります。

そこで、かゆい皮膚に熱いものや冷たいものを当てても、掻くのと同じような「痛みによる快感」を得ることができるのです。

(2)くすぐったさって何?

 どうしてくすぐったいという感覚があるのでしょうか。
くすぐったさは、人だけではなくほかの動物でも感じられる感覚です。

動物の進化の過程で「痛み」から「かゆみ」が生まれ、そしてさらに派生的に進化して生まれたのが「くすぐったさ」だといわれています。

 くすぐったさの特徴は、他人からくすぐられる必要があることです。

これについては、古くはアリストテレスが論じています。
自分で自分をくすぐってもくすぐったくないのは、自分でくすぐっているのを知っているからです。

他人からくすぐられるとくすぐったく感じるのは、くすぐられるのを予期できないからだとしています。物理的には全く同じ刺激を与えているにもかかわらず、自分でくすぐってみると意外なほどくすぐったくはありません。

自分でくすぐってみて笑い声を上げる人はほとんどいないのです。

 その理由は、脳の働きにあります。

人にくすぐられるときは、くすぐられた部位の触覚や圧覚などの刺激情報が脳の体性感覚野に達し、くすぐったさを感じます。

ところが自分で自分をくすぐるときには、小脳から自分の指を動かす指令が出るのと同時に、体性感覚野へ感覚を抑制する命令がいきます。
なぜ抑制する必要があるのか、それは、くすぐったさは元々、虫や寄生虫など外からの刺激を感じるためのものであるため、自らが生み出す刺激とは区別する必要があるからです。

(3)内臓感覚って何?

<内臓感覚のしくみ>

 空腹やのどの乾き、吐き気、尿意や便意などのさまざまな感覚は、内臓から発生した信号によってもたらされる感覚です。

これらの感覚や内臓痛をまとめて「内臓感覚」と呼びます。

 内臓感覚は臓器に分布している受容器で感じ取っています。

例えば、内臓を動かす平滑筋の中や、心臓の壁をつくる心筋、内臓の粘膜などにある受容器が発痛物質の発生を感知したり、臓器の動きによって圧力を受けたりすることでもたらされます。
内臓では、皮膚よりも神経が少ないため、どこが刺激されているかという感覚はあまりなく、消化管にメスを入れたとしても痛覚は生じません。

内臓痛は皮膚の痛みとは違い、非常に限局した障害では起こらず、臓器が広範囲に損傷を受けた場合に感じられます。

内臓痛は、内臓平滑筋が痙攣(けいれん)を起こして強く収縮・伸展されたとき、また、内臓に酸素や栄養素を送る血管が循環不全を起こしたときに生じます。

 痛みは神経を通って脊髄から脳へと伝えられますが、その際、皮膚の特定の部分に不快感や痛みを感じることを「関連痛」といいます。

例えば、肝臓疾患のときに右肩、心臓疾患のときに左上腕に痛みや不快感をかんじることがあります。
これは、脊髄で内臓からの感覚神経と皮膚からの神経が集まり、大脳皮質へ伝達される際、脊髄において内臓神経痛を皮膚からの痛覚刺激として認識するからです。

関連痛は内臓疾患の診断に非常に重要です。


<嘔吐も内臓感覚による反射>

 内臓感覚の反応には、脳に届いて意識できる感覚をもたらすものと、脳を介さずに脊髄や脳幹で臓器に戻る信号を発生させる(反射を起こす)ものとがあります。

 体に悪い食べ物を食べたときなど、強い吐き気が起きて食べ物を戻すことは反射による反応です。

食べ物に含まれる有害な物質が胃の筋肉にある受容器を刺激し、発生した信号が脳の延髄にある嘔吐中枢に伝わるためです。

嘔吐中枢からは胃の筋肉や横隔膜、腹部の筋肉を動かす信号が出て、胃の内容物を食道に押し戻す動きが起きます。
これは、体が備えている緊急避難の方法の1つで、体内に有害物が入ったときにできるだけ早く排出するために備わった機能です。

(4)皮膚感覚で直感は働く?

 皮膚感覚は自己と外界の境界上に生じ、社会的環境との関係を捉える重要な感覚です。

そこで、私たちはしばしば、皮膚感覚で直感的に判断しています。

ある部屋に入ったとき「緊張した空気に包まれていた」とか、何かの事態に対して「身の毛がよだつ」ほどの恐怖を感じたり、暗闇に人の気配を感じたりします。

 なぜ、そう判断したのかを説明するのは難しく、その状況に身を置いて初めて感じられる「何か」なのです。
皮膚感覚で捉えた何かが、基本的な「快・不快」の感覚を呼び覚まし、「快」であれば取り入れよう近づこうと判断し、「不快」なら遠ざけよう逃げようという判断がされます。

このような判断は、皮膚感覚といっても、何かに直接触れて受容器や神経繊維が興奮したわけでなく、皮膚の持つ特殊な判断といえます。

(5)皮膚を温めると心も温まる?

 米国で行われたある研究では、実験参加者を実験室に案内する途中で、案内係がメモを取る間、参加者に温かいコーヒー、あるいは冷たいコーヒーを持っていてもらいました。

そして、実験室に到着後、参加者には「ある人物のことを書いた文章」を読んでもらい、その人物の印象について評定してもらいました。

すると、手に温かいコーヒーを持った人は、他者の人格を「親切」「寛容」だと判断する傾向にありました。

さらに、実験のお礼として「友人へのギフト」と「自分用の品」のどちらかを選んでもらうと、手を温めた人は前者を選ぶことが多い結果となりました。

 その後の実験では、皮膚を温めると、人との心理的距離が近くなることや、人を信頼しやすくなることなども分かっています。

実験では手の温度を操作しましたが、手でなくてはいけないわけではなく、どの身体部位であっても同じ結果になるといいます。

つまりは、全身のどの部位でも皮膚を温める心が温かくなり、人に優しくなるといわれているのです。


7-NaNa-鍼灸院川西院では、体の芯まで温められるお灸を鍼灸治療時に受けられる他、

鍼が苦手な方・30分たっぷり集中して体を温めたいという方におすすめの「ぬくぬく灸」というお灸のみの施術もご用意しております。

冷えやストレスなどにお悩みの場合は鍼灸治療を是非体験してみてくださいね。